「 桂林の白い皿 」             2007年1月20日掲載
          
                               
 首都圏を中心に暮れからマナー本が良く売れているそうだ。新年の挨拶回りや上司宅の訪問のためとか。進学や就職で親元から離れ、教えてくれる年長者が身近にいないことが影響しているらしい。戦後の自由の名の下に、社会における礼儀正しい振る舞いを伝えられない親世代が急増したせいかもしれない。
 書店で見たマナー本には帽子のことが記されていなかった。展示会でよく質問されるので少し触れてみたい。 
 ツバの広い日除け帽以外なら、女性は髪や服の一部と見なされ室内でも食事中でも着帽のままで良い。映画館等で後方に邪魔になる場合は脱ぐのがエチケット。和室では、小さな帽子以外脱ぐことが望ましい。茶室に入るなら最初から被って行かないほうが・・・。 男性は室内では脱帽が基本。外で女性と会ったときには脱いでご挨拶。
  脱帽とは敬意と同時に寛ぎを表す。キャップ(野球帽)が大流行で、飲食店で食事中も被ったままの男性を時々見かける。スマートな帽子の扱いは紳士の証だったのは遠い昔になってしまったのだろうか。
 二十年ほど前、桂林でおじいさんと五歳くらいの男の子と合席になり朝食を取っていた。利発そうなその子が白い皿を上げたり下げたりし、中国語で私たちになにかを言っている。そばでおじいさんが諭すように制した。
 後年、中国では食器を持って食事をするのはマナー違反だと知った。「家(ヤー)習(ナレー)どぅ外習(フカナレー)(家でのしつけが外に出た時の行動になる)」あの時の男の子は家庭で常々、自国の礼儀作法を教えられていたのであろう。
 「守礼の邦―琉球」その名に恥じないウチナーンチュであり、伝えられる大人でありたい。
             



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