「白いマジシャン」              2007年2月8日掲載
                             

 二月に入り高知もやっと冬らしくなり、暖冬で早々と咲いた菜の花の上に雪が降っている。
 初めて雪を見たのは東京での学生時代。授業中クラスメイトらの囁くような「ユキ」という言葉で窓の外に目をやると、鈍より曇った空から白いものがふわふわと舞っていた。思わず「ゆきー」と声を出していた。
 沖縄出身であることを知っていた先生が「山城さん(旧姓)が雪を見たいようなので、授業はこれにて終了!」と粋な計らいをしてくれた。 
一目散に中庭に走った。友達の「コート着ていかないと寒いわよー」の言葉が後ろから聞こえた。私は映画のワンシーンのように自然に両手を広げてクルクル回っていた。セーターには、はっきりと雪の結晶が。小学生の時に見た雑誌「科学」に載っていたものが手の中にあった。
 空を見上げたら、なんと降ってくる雪が黒い。目線を上げただけで白が黒に変わる。目の錯覚を発見したようで嬉しかった。静かに降りながら木々の緑、土の茶が、たちまち白一色になっていた。それは少し時間のかかるマジックのようだった。
 群馬県出身の友人が、始めて海を見たのは小学校6年生。想像以上にとても大きくて、いつまでも眺めていたそうだ。「百聞は一見に如かず」―彼女は一人娘の親として、綺麗な沖縄の海、海外旅行、スキーと幼い頃から連れて行っている。
 「感動」にも旬があるかもしれない。多感な時期に見聞を広めておくことは大切なことではないだろうか。
 この冬、初めて雪と遭遇するウチナンチュが沢山いることだろう。彼らにとって天からの贈り物が素敵な思い出となりますように。
 


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