「黒潮に乗ったリュウキュウ」          2007年 6月7日

         
 高知には「リュウキュウ」という食材がある。郷土料理の本には「暑い夏の風物詩、土佐の夏はこれがないと始まらない。」と紹介され、沖縄から伝わったことから、その名がついたと記され、漢字では「琉球」と表記されている。
 リュウキュウとは、サトイモとクワズイモとの間に自然にできた雑種で葉柄(ずいき)だけを食べるハス芋のこと。姿は田芋によく似ていて1メートルぐらいまで背が伸び、きれいな薄緑色をしている。田芋の茎―ムジは茎の皮を剥いで料理する時アクで指が真っ黒になるが、リュウキュウはアクが少なく、塩もみするか、さっと湯がいて酢の物などにする。太刀魚や鮎が合い口でシャキシャキした食感と鮮やかな緑が涼しげで、酒の肴や副菜になる。
 実は、私はこの名が最初不満だった。九州の一部では「琉球藷」とも呼ばれているサツマイモなら話もわかる。沖縄では子孫繁栄を表し祝い膳に欠かせない田芋でも許せる。しかし、ハス芋は、芋は食せず、子芋もできない。食べられる茎の中の部分はスポンジ状で味もない。黒潮海流に乗ってきたのだろうが、沖縄の友人知人に聞いても知らないハス芋が、なぜ「リュウキュウ」なのかと・・・。
 しかし、長年食べているうちに段々と好きになり、食卓に彩りを添えてくれる名脇役ぶりに、感心したりするようになった。沖縄でゴーヤーが、どの家庭でもよく食べられるように、高知ではリュウキュウが出回ると「夏が来た!」と親しまれ、「酢の味がしみやすく、いつまでも緑が消えない。」からと愛されている。
 遠く離れた地で故郷の名を聞く。単純に喜ぶべきことだと最近思えるようになった。


 




inserted by FC2 system