「白に染める」                       2007年6月21日
                  

 新緑の木々の小道を曲がると、五十センチ角の白い布が二十枚ほど横に並び、太陽の光を浴びて風に揺れている。ここは高知県立牧野植物園・牧野富太郎記念館の裏庭。そのシルクの布たちは、不思議な白さを醸しだしている。
 泰泉寺由子(じんぜんじよしこ)in Kochi特別展「キルトの世界―植物の神(しん)彩(さい)」が七月一日までの一ヶ月間行われ、関連イベントの「青竹染めで白を染める」ワークショップに参加した。
 牧野のスタッフにより準備された孟宗竹は、大きな箸くらいに割られ、その量をみて、この作業がいかに労力を有することか想像するのは容易かった。竹を炊くこと2時間、漉して、白い布を浸し、ゆすること一時間、染液の竹の煮汁がサラサラになり力が無くなる頃引き上げ、水で濯ぎ、太陽の下に干す。淡い卵色ながら影になるところは青みを帯びている白い布が染め上がった。氏の仕事の一端を追体験でき、爽やかなまぶしい風に吹かれた贅沢な時間だった。
 氏は青竹染めの白を「神(しん)彩(さい)」と名づけた。独創的なデザインのキルティング(布と布との間に綿の芯などをはさみ、ミシンや手縫いのステッチで押さえ、浮き彫り模様を描く技法)をほどこした作品はどれも清々しく、包まれるように優しく、日向の匂いがした。
 植物染料で染めたものを身にまとうと自然からのパワーが貰える話、薬効の話がレクチャーの中で出た。沖縄では、今でも草木染めが盛んだ。人々は植物の持つ生命力とも言える色彩に惹かれ続けているのかもしれない。
 さて「色」をテーマにした私のコラムも今日が最後。皆様が彩り豊かな日々を過ごせますように。感謝!






  


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